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Radeon RX 7000 シリーズにも採用された「チップレット構造」を解説【PR】

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AMD / Radeon / Ryzen /

    この記事では、AMD Radeon RX 7000 シリーズの上位モデルやデスクトップ向けRyzen 7000 CPUでも採用された「チップレット構造」その特徴と利点、欠点について解説します。

    基本要素とモノリシック構造

    ではまず前提知識として、CPUとGPUに共通で搭載されている要素と、従来のモノリシック構造について解説します。

    CPUとGPUはご存知の通り基本処理とグラフィックス処理と役割が異なりますが、基本的な要素は共通です。

    • 計算処理を行うコア
    • 処理データを一時保存するL1/L2/L3キャッシュ
    • メモリを制御するメモリコントローラー
    • 各コンポーネントと接続を行うI/O
    • その他特定の処理を行うアクセラレータ(非必須)

    CPUとGPUは大まかにこの5つが搭載されています。

    そしてモノリシック構造はこの5つの要素を、ダイと呼ばれるチップの上にまとめて製造する構造で、従来のCPU/GPUで用いられてきました。

    モノリシック構造の例:AMDのRadeon RX 6000 シリーズ 「RDNA 2」アーキテクチャの簡易的な模式図

    モノリシック構造の限界

    この従来のモノリシック構造はシンプルな反面、時代が進むに連れてデメリットが顕著になってきました。

    その大きな一つがダイ面積の増大によるコスト増です。一般的にCPU/GPUの性能向上を図る場合、製造するダイの面積を広く取って実装できるコアやキャッシュを増やすのが理想ですが

    ダイの面積を増加させると、必要な材料コストが増えるだけでなく、広い面積にわずか数nmという非常に細かなパターンを実装する必要があるため製造過程での欠陥率が高くなります。

    これを例えるなら1つの大きなピザを作るようなもので、最初の小さなピザなら簡単に作れますが、大きくなればなるほどその作る難易度は高まります。

    特にこのダイを大きくできる限界を「レチクル・リミット」というよ、大体800mmくらい。

    これまでは「プロセスルール」と呼ばれる内部の実装配線の幅を狭めることで、全体で必要な面積を抑えるなど工夫をしてきましたが、近年ではそれも限界が近く、最先端のプロセスルールで製造するためのコストも無視できないものとなってしまっています。

    チップレット構造とは

    それではこれを踏まえて、チップレット構造について解説していきます。

    チップレット構造はモノリシックとは異なり、複数のダイに要素を分けて製造を行います。製造後はインターコネクトを用いた接続を行い一つのパッケージにします。

    ここでは代表的な例として、AMDのGPU「Radeon RX 7000 シリーズ」の上位モデルを挙げさせていただきます。

    このGPUは

    • グラフィックエンジンとL1/L2キャッシュ、その他I/Oなどを搭載した1つのGCD
    • メモリコントローラと巨大なL3キャッシュである「Infinity Cache」をまとめた6つのMCD

    2種合計7つのダイで構成されています。

    チップレット構造の例:AMD Radeon RX 7000 シリーズに採用されている「RDNA 3」アーキテクチャの簡易的な模式図

    チップレット構造のメリット

    歩留まりの改善

    先述の通りコア数を大きくしようとするとそれに伴ってダイ面積が大きくなるため、製造過程での欠陥発生割合が高くなってしまいますが、チップレット構造では分割した小さなダイを製造するため製造難易度を低くできます。

    これを同じくピザで例えるなら、チップレット構造は複数の小さなピザを作っているような状態で、それを後でプレートの上に円形に並べて一つの大きなピザのように見せています。大きなピザを作るのであればこちらの方が作る難易度は低いのがわかると思います。

    プロセスルールの混合利用

    モノリシック構造では、単一のダイで製造を行っているためプロセスルール(配線)は1種類しか使用できませんが、チップレット構造ではダイが分離しているため、ダイ毎に使用するプロセスルールを変更できます。

    先程例に出したRadeon RX 7000 シリーズ上位の場合だと

    • GCDを性能に優れる最先端のTSMC N5ノード
    • MCDを低コストで安定した生産が見込める旧世代のTSMC N6ノード

    という形で使い分けを行っています。

    このようなメリットにより大規模なダイを製造する際の生産性を引き上げ、環境負荷やコストを削減できるのがチップレット構造の優位性です。

    チップレット構造のデメリット

    インターコネクトなどの追加コスト

    チップレット構造はダイを分離し、後で一つにするパッケージングが必要となりますが、その際に使うインターコネクトは非常に高い転送レートをもたせる必要があるため、これに対する物的/技術的コストが発生します。

    しかしこのデメリットは、多くの場合チップレット構造化のコスト削減を下回るため、大きいデメリットとなりにくいです。

    消費電力とレイテンシの増大

    ダイを分離しているため、ダイ間を跨いだ通信においてはインターコネクトの性能によってはパフォーマンスの低下やレイテンシの増大を引き起こす場合があります。また物理的に距離が離れるため、電力のロスが生じ電力効率も悪化します。

    これまでCPU/GPU共にチップレット構造を積極的に採用してきたAMDでは、インターコネクトである「Infinity fabric」の改良はもちろん、チップレット構造の改良でレイテンシの影響を最小限にとどめたり、制御の改良でなるべく電力効率を改善するなどのアプローチが取られており、これらのデメリットを最小限に抑える工夫がされています。

    まとめ

    以上がRadeon RX 7900でも採用されている、チップレット構造の概要・メリット/デメリットでした。

    今後ダイ面積の増大が進むにつれ、チップレット構造のような従来とは異なるアプローチの重要性は増してくると予想されています。

    知る必要性が薄い知識であるのは確かですが、知ることで自作PC関連のニュースやプレスリリースを楽しく読んだりできるので頭の片隅にちらっと入れてもらえれば幸いです。

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